特定技能から経営管理に在留資格を変更する方法を解説

「経営管理ビザってどんな在留資格?」
「特定技能ビザとの違いは?」
「特定技能ビザから変更するには?」
経営管理ビザは日本での事業展開・企業などを目的とする外国人が主に取得を目指す在留資格ですが、日本で会社を設立するということから難易度が高いと言われており、全体像をしっかりと理解する必要があります。
なかでも特定技能ビザから経営管理ビザの取得を目指す外国人労働者は要件や違いなどをしっかりと理解することが大切です。
本記事では経営管理ビザの概要や特定技能ビザとの違い、変更する手順について詳しく解説しますので、特定技能ビザから経営管理ビザを取得を目指す方は最後まで読んでみてください。
経営管理ビザとは?
経営管理ビザは就労ビザの種類のひとつで、外国人が日本で会社を設立したり、既存の日本法人で役員・管理者として事業の運営に従事するための在留資格です。
経営管理ビザを取得することで外国籍の起業家などが日本国内で経営・管理業務を行うことができるようになるため、取得難易度はほかのビザに比べて高い傾向にあります。
経営管理ビザと特定技能ビザの違い

経営管理ビザと特定技能ビザの主な違いは以下のとおりです。
項目 | 経営管理ビザ | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
---|---|---|---|
主な活動 | 事業の経営・管理(役員・管理者としての意思決定・組織運営)。現場作業は主業務にできない | 指定分野での現場就労(即戦力レベル) | 指定分野での熟練業務(監督・統括を含む) |
対象分野 | 業種の制限なし(必要な営業許可は取得要) | 16分野(介護、外食、農業など) | 11分野(建設、造船・舶用、製造の一部など) |
主な要件 | 事務所の実体確保、事業の適正性・継続性、必要許認可 | 分野別の技能試験合格、日本語要件あり(多くはN4以上、分野により異なる) | より高い技能水準(長年の実務等) |
規模基準 | 資本金500万円以上または常勤職員2名以上が目安 | なし(雇用契約と分野要件が中心) | なし(ただし熟練要件) |
雇用関係 | 事業主・役員として活動(役員報酬等) | 日本企業との雇用契約が前提(支援義務あり) | 日本企業との雇用契約 |
事務所要件 | 事業用物件の契約・設備等が必要(自宅・バーチャルのみは不可が原則) | 不要 | 不要 |
家族帯同 | 可能(家族滞在を利用) | 原則不可 | 可能(配偶者・子) |
在留期間・更新 | 更新可(事業の実体・適法性・継続性が審査ポイント) | 通算最長5年 | 上限なし(更新制限なし) |
今後規模要件の基準が厳しくなる可能性がある
現行の経営管理ビザにおける規模基準の目安は「資本金500万円以上または常勤2名以上」ですが、2025年に「資本金要件を3,000万円へ引き上げ」「経営管理の実務3年以上または同分野の修士以上の学位」「事業計画の専門家評価」などを求める見直し案が報じられています。
これは諸外国より基準が低く悪用されるリスクがあることから厳格化を求める声が多かったことによるものです。
現行と見直し案の比較は以下のとおりです。
項目 | 現行 | 見直し案 |
---|---|---|
規模基準(資本) | 資本金500万円以上(目安) | 資本金3,000万円以上 |
規模基準(雇用) | 常勤職員2名以上(資本金要件との選択可) | 常勤職員1名以上を必須化 |
経営者の資質 | 明確基準なし(実体審査中心) | 実務3年以上または関連修士以上などを要求 |
事業計画 | 自主作成で可 | 専門家評価を義務化 |
2025年8月30日時点では、あくまで見直し”案”のでので、今後の動向については最新情報をチェックしましょう。
(参照:自民党「経営・管理ビザ 許可基準厳格化求める外国人材等特別委員会」)
特定技能ビザから経営管理ビザに変更する方法・手順

特定技能ビザから経営管理ビザに変更する方法・手順は以下のとおりです。
STEP①:事業計画の策定
STEP②:事務所・店舗の確保
STEP③:会社設立・登記
STEP④:事業税務・社会保険の届出
STEP⑤:事業計業種認可の取得
STEP⑥:在留資格の変更申請
それぞれの手順について詳しく解説します。
STEP①:事業計画の策定
事業計画書は、経営管理ビザ取得の要となる書類です。まず自社のビジネスモデルを明確化し、提供する商品・サービスの特徴や競合優位性を具体的に記載します。
続いて、ターゲット市場の規模や成長性を示す市場分析、売上高や費用、人件費などの月次/年間損益予測を盛り込み、資金調達方法や運転資金の確保計画を詳細にまとめます。
最後に、業界動向や過去のデータを根拠として、事業の継続性・安定性を裏付ける論拠を示すことで、入管担当者の納得を得やすくします。
STEP②:事務所・店舗の確保
日本国内で実態ある事業拠点を持つことが必須です。事業計画に合致した立地や面積を見極め、賃貸借契約書または所有権証書を取得します。
契約書には事業主名義での使用を証明できる条項が含まれているか、必要に応じてビルオーナーや管理組合からの使用承諾書が整っているかを確認しましょう。
実在性を示すため、登記事項証明書や物件写真を添付すると審査がスムーズになります。
STEP③:会社設立・登記
法人としての体裁を整えるため、定款作成から登記手続きまでを正確に実施します。
公証人役場で定款認証を受けた後、発起人名義の口座へ資本金を払い込みをして払込証明書を取得します。
その後法務局にて設立登記申請を行い、登記事項証明書を発行します。
これにより法人格が正式に成立し、登記事項証明書に記載された資本金額や事業目的が在留資格変更申請書類に反映されます。
STEP④:事業税務・社会保険の届出
法人設立後、速やかに税務署や年金事務所、ハローワークなどへの届出を行い、法令遵守体制を構築します。
税務署には「法人設立届出書」や「青色申告承認申請書」、「給与支払事務所等開設届出書」を提出します。都道府県・市区町村へは法人事業概況説明書を提出し、事業所税の申告を済ませ、同時に健康保険・厚生年金への加入手続き、雇用保険・労災保険の適用手続きも行い、従業員を雇用する場合の社会保険義務を履行します。
STEP⑤:事業計業種認可の取得
業種によっては事業開始前に国家または地方自治体の許認可が必要です。
飲食店であれば保健所の食品衛生法に基づく営業許可、旅館業では旅館業法に基づく許可、建設業なら建設業許可、旅行業では旅行業登録が求められます。
各許認可には申請書類や図面、立地条件、管理体制の説明が必要な場合が多く、事前に要件を洗い出して速やかに対応できるよう準備を進めましょう。
STEP⑥:在留資格の変更申請
すべての準備が整ったら、管轄の地方出入国在留管理局へ在留資格変更許可申請を行います。
在留資格の変更申請は以下のとおりです。
- 在留資格変更許可申請書に必要事項を記入
- 上記書類をすべて揃え、管轄の地方出入国在留管理局へ持参または郵送
- 申請手数料(4,000円)を納付
- 受付後、審査担当から追加資料の提出や面談要請がくる場合あり
- 審査期間:平均2~3ヶ月、長期化すると4ヶ月ほどかかるケースもある
- 許可後、新在留カードを受領。役所で住所変更が必要な場合は速やかに手続きを
特定技能ビザから経営管理ビザに変更するときの注意点

特定技能ビザから経営管理ビザに変更するときの注意点は以下のとおりです。
・事業計画書が審査でもっとも重視される
・資本金を明確に裏付ける書類を用意する
・必要な許認可を取得する
・在留期間に余裕を持って申請する
・専門家を活用して申請を進める
それぞれの注意点について詳しく解説します。
①事業計画書が審査でもっとも重視される
経営管理ビザでは事業計計画書がもっとも重視されるポイントとなるため、信頼できる数字や根拠をもとに具体的に作成することが大切です。
事業計画書では月次損益計算や売上予測、資金調達方法、経営方針などの情報が必要となりますが、継続性・安定性を明確にすることで審査評価を高めることができます。
また、経営管理ビザでは組織管理や戦略立案なども重要となるため、組織図や社員教育・評価システムなどの管理業務を明確にすることも重要です。
②資本金を明確に裏付ける書類を用意する
2025年8月25日時点では、経営管理ビザに必要な資本金は500万円以上とれているため、資本金を用意できていることを裏付ける情報を用意しておきましょう。
事業用口座への入金記録や借入がある場合は返済計画の明確化など、資本金の要件を満たしていることを証明することが大切です。
③必要な許認可を取得する
許認可が必要なビジネスを行う場合は、申請前に必要な許認可をすべて取得する必要があります。
飲食店であれば「食品衛生責任者の講習修了証」、建設業であれば「建築業許可」や「宅建業免許」といったように、必要な許認可を洗い出して取得しましょう。
④在留期間に余裕を持って申請する
経営管理ビザは特定技能ビザの在留期間が切れる前に申請を行うことが必要です。
特定技能ビザで就労していた職場を退職してから原則3ヶ月以内に経営管理ビザの手続きを開始しないと在留資格が取り消しになる可能性があります。
そのため、在留期間には余裕を持って手続きを進めることが大切です。
⑤専門家を活用して申請を進める
経営管理ビザはほかの在留資格に比べて取得が難しい傾向にあるため、外国人労働者のサポートを行なっている企業や国際業務に強い弁護士や司法書士などの専門家に依頼して申請を進めることで書類漏れや不備を防ぐことができます。
特定技能ビザから経営管理ビザに変更する具体的な事例・ケース

特定技能ビザから経営管理ビザに変更する具体的な事例・ケースを紹介します。
事例1:特定技能(農業)から経営管理(農産物流通)
元の在留資格/分野 | 変更後の事業 | 主な準備・許認可 | 期間目安・成功の鍵 |
---|---|---|---|
特定技能(農業) | 自社で卸売中心の農業法人 | 農用地の利用計画、賃貸範囲の確認/退職証明・収入印紙など補完資料/野菜の価格推移・単価根拠の整理 | 期間目安:2か月程度 成功の鍵:計画の具体性(売上表・損益・根拠資料) |
事例2:外食から飲食店経営
元の在留資格/分野 | 変更後の事業 | 主な準備・許認可 | 期間目安・成功の鍵 |
---|---|---|---|
特定技能(外食) | 自身の飲食店の経営 | 店舗契約/食品衛生責任者の確保/飲食店営業許可/内装・設備整備/会社設立・登記・税務届出 | 期間目安:45日前後~数か月 成功の鍵:「申請時点で即営業できる状態」 |
事例3:特定技能ビザ(分野不問)から小売・リユース事業
元の在留資格/分野 | 変更後の事業 | 主な準備・許認可 | 期間目安・成功の鍵 |
---|---|---|---|
特定技能 | 古物商(リユース)での開業・経営 | 事務所の用途・保管体制を整備/古物商許可(警察)/資本金払込証明/事務所賃貸借契約/給与支払事務所開設届/事業計画(販路・在庫回転・原価率・人員) | 期間目安:—(記載なし) 成功の鍵:許認可・体制の実体化+具体的な事業計画 |
特定技能ビザから経営管理ビザへの変更に関するよくある質問
特定技能ビザから経営管理ビザへの変更に関するよくある質問をQ&A形式で紹介します。
Q1.経営管理ビザの取得は難しいですか?
経営管理ビザは在留資格のなかでも要件や審査基準が厳しいため、取得難易度の高い在留資格と言われています。
許可率は非公開ですが、要件を満たしている人でも5割ほどの認可率であると言われることもあります。
Q2.経営管理ビザの厳格化はいつからですか?
2025年8月30日現在、経営管理ビザの厳格化については明確な期限は発表されていませんが、2025年10月中が予定されています。
2025年10月に省令の改正を目指すと言われているため、10月ごろの最新情報をチェックしましょう。
まとめ|経営管理ビザの取得は専門家に依頼するのが◎
本記事では経営管理ビザの概要や特定技能ビザとの違い、変更する手順について詳しく解説しました。
経営管理ビザは取得難易度が高いため、自分ひとりで書類作成や申請を進めると不認可率が高くなってしまうため、基本的には専門家に依頼して認可率の高い状態で審査を進めることが大切です。
ぜひ本記事を参考にして経営管理ビザの取得を目指してみてください。
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