外国人雇用状況届出書の提出義務とは?手続き方法と書き方をわかりやすく解説

外国人労働者を雇用する際には、在留資格や契約内容だけでなく、「外国人雇用状況届出書」の提出が法的に義務付けられています。
しかし、初めて届出を行う企業や人事担当者にとっては「どこに提出するのか?」「どのように書けばよいのか?」といった不安も多いはずです。
本記事では、外国人雇用状況届出書の基本情報から、提出先・記入方法・罰則の有無まで、実務担当者に必要な情報をわかりやすくまとめて解説します。
外国人雇用状況届出書とは何か?
外国人雇用状況届出書とは、外国人労働者を雇い入れたり離職させたりした際に、企業側がハローワークに届け出る義務のある書類です。
これは「雇用対策法」第28条に基づいており、違反した場合には企業に対して指導・改善命令が出される可能性があります。
この制度は、不法就労の防止や外国人労働者の雇用実態の把握を目的としています。
企業が外国人を雇用した場合、14日以内に届け出なければなりません。
外国人雇用に関する法令や制度は頻繁に見直しが行われており、常に最新の法的枠組みを理解しておくことが重要です。
特に外国人材の活用を積極的に進める企業ほど、法令順守と透明性のある雇用管理が求められます。
届出が必要となる対象者
外国人雇用状況届出書の提出対象となるのは、外国籍を持つすべての労働者(パート・アルバイト含む)です。
対象者には以下のようなケースが含まれます。
- ●新規に外国人を採用したとき
- ●外国人が退職・離職したとき
- ●在留資格が変更になったとき
なお、特別永住者や外交官、公用資格を持つ者は対象外です。
これに該当するかどうかは、採用時の在留カードやパスポートを確認することで判別可能です。
対象者を正しく判断することは、書類の作成と提出だけでなく、労務管理全体の信頼性向上にもつながります。
外国人労働者との信頼関係を築く上でも、適切な書類の整備は重要なステップです。
届出のタイミングと提出先

外国人雇用状況届出書は、雇用日または離職日から14日以内に提出する必要があります。
提出が遅れると、法令違反として行政指導の対象になる場合があるため、期限の管理が重要です。
提出先は事業所を管轄するハローワーク(公共職業安定所)です。
電子申請にも対応しているため、マイナポータルや厚生労働省の「GビズID」を利用することで、オンラインでも手続きが可能です。
ハローワークへの提出は、事業所ごとの実務フローに組み込むのが理想です。
毎月の入退社の際にリマインダー設定などでミスを防ぎましょう。
中小企業の場合、専任の人事担当者がいないケースも多いため、提出漏れを防ぐためのチェックリストや、担当者変更時の引き継ぎ書類の整備が推奨されます。
届出に必要な情報
項目 | 具体的な内容 |
企業情報 | 企業名、所在地、法人番号など |
外国人労働者の氏名 | パスポート表記に準拠 |
在留資格 | 技術・人文知識・国際業務などの在留資格 |
在留カード番号 | 有効な番号(在留カード表記) |
雇用開始日または離職日 | 実際の入社日または退職日 |
就業形態 | フルタイム/パート/アルバイトなど |
届出書には上記のような情報を記載する必要があります。
正確な情報を記入するため、採用時にパスポートや在留カードを確認しておくことが大切です。
採用書類一式に届出用データを含めると、提出の効率化につながります。
実務では、専用フォーマットをExcelやクラウドで共有管理し、複数人での確認体制を整えることで、ミスの予防とスムーズな業務遂行が可能になります。
記入方法と書類の入手先
届出書は紙でも電子でも提出可能ですが、様式に不備があると受理されないことがあるため注意が必要です。
厚生労働省の公式サイトからも様式をダウンロードできます。
特に初めて提出する場合は、公式の記入例に沿って作成することで差し戻しのリスクを軽減できます。
また、外国人雇用が増加している昨今では、外国語対応が可能な担当者を配置するなど、社内体制の整備も求められています。
特に外国人からの質問対応や書類の説明を正確に行うことは、職場環境の改善にもつながります。
《手書き・紙で提出する場合の注意点》
- ●黒ボールペンで丁寧に記入する
- ●二重線訂正・押印などは不可
- ●提出用と控えの2部を作成する
提出は、郵送または窓口持参が可能ですが、控えに受付印をもらうようにしましょう。
郵送の場合は簡易書留での送付がおすすめです。
万が一提出書類に不備があった場合のために、担当者ごとにチェックリストを活用することを推奨します。
紙提出の管理には、提出控えをPDF化して社内サーバーに保管するなど、アナログとデジタルのハイブリッド管理が有効です。
《電子申請のメリットと注意点》
- ●GビズIDによるログインでオンライン提出可能
- ●24時間いつでも申請できるため、締切直前でも間に合う
- ●一部の内容はCSVファイルの一括登録にも対応
ただし、システムエラーや入力不備によるエラーリターンに注意が必要です。
必ず確認画面で内容を精査しましょう。
また、電子申請の控えはPDFでダウンロードして社内保管しておくと安心です。
電子申請は特に多店舗展開や人材派遣業など、多数の外国人労働者を扱う企業にとっては大きなメリットがあります。
導入の初期コストや設定に不安がある場合は、社労士など専門家のサポートを活用するのも一つの方法です。
提出しないとどうなる?罰則とリスク

外国人雇用状況届出書を提出しなかった場合、現状では「罰金刑」はありませんが、行政指導や監督官庁からの是正指導を受けることがあります。
悪質と判断された場合、企業名の公表や入管手続きへの影響も考えられるため、軽視できない義務です。
届出を怠ったことが原因で、外国人労働者本人の在留資格更新に支障が出る可能性もあるため、雇用する側としての社会的責任も問われる点に注意しましょう。
企業にとっては、信頼性のある雇用管理体制がブランドイメージや採用力の向上にも直結します。
行政機関からの信頼を損ねないよう、体制の整備が求められます。
過去にあった違反事例
- ●離職届出を忘れていたことで調査が入り、改善報告を求められたケース
- ●届出の記載内容に誤りがあり、複数回の差し戻しを受けた事例
このような事態を避けるためにも、事前に手続きフローを整備しておくことが重要です。
担当者が変更された場合に備えて、社内マニュアルや引き継ぎ資料を整えておくと安心です。
また、外国人本人が日本語を十分に理解できない場合もあるため、雇用条件の説明や届出書類の内容について、多言語で対応できる仕組みづくりも検討されるべきです。
まとめ
外国人雇用状況届出書は、外国人を雇用するすべての企業が守るべき法定義務です。
提出先や様式、期限、電子申請の可否などをしっかり把握し、正確・迅速に対応することが求められます。
今後も制度改正やオンライン化が進む可能性があるため、最新情報は厚生労働省の外国人雇用ページで定期的に確認することをおすすめします。
定期的な社内研修を実施し、外国人雇用に関わる担当者の知識のアップデートを図ることも、継続的なコンプライアンス体制の確立には欠かせません。